DNAに呼びかけるもの
- 東京弓弦楽団
- 5月26日
- 読了時間: 3分

6回定演まで一か月を切り、ラストスパートです。
今日は打楽器のKさんも参加しながら仕上げに向けて更に細かい田先生のご指導。音楽は技術の他に気持ちが大切!!それって当たり前のようですが、気持ちを音楽に乗せるのは難しい?まだまだ勉強と修行が足第りないようです。
ブログは中胡の羊子さん!勉強になります^^
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今日の練習で、田先生は、私たちに是非京劇を聴くようにとおっしゃった。それがきっと演奏に役立つと。中国の伝統的な節回しには、京劇をはじめとした地方の伝統劇の音楽が根底にあって、中国人は幼い時から耳にし、歌っているから、DNAに組み込まれてるかのように、こういう節回しの時はどこにアクセント(強い拍「板ban」と弱い拍「眼yan」の「板」)がくるのか、どこに滑音がくるのか、揺れや微妙な間の取り方など、五線譜には表現しきれない部分、言葉ではなかなか伝えきれない部分がわかるのだそうだ。
4週間後にせまった東京弓弦楽団第6定演では中国の四大民間伝説の一つ、梁祝(梁山伯と祝英台)を題材としたバイオリンコンチェルトを胡琴で再現するという挑戦をする。この物語は約1700年前には存在が確認されていて、中国の人々に愛され、様々な中国の地方劇の題材となってきた。そのため、フィギュアスケートでも使われる有名な旋律のほかに、伝統的な旋律が度々登場する。この私たちのDNAにはない部分をどこまで補えるのか、アンサンブルとしてどう揃えるのか、なかなかのチャレンジではある。
練習の帰り道、私の記憶の走馬灯に、2つのシーンが蘇った。香港映画のワンシーンで映画のセットの上で演じられる京劇の一節。鼓板の速い音が途切れて、「ダーィワーンチーン( 大王 請 )」という女形の声から始まるほんの数10秒のかけあい。友人がこのシーンを声真似楽器真似で再現していたので、よく覚えていて、なぜか、それを思い出すと全身でせつなくなる。
これは香港映画「七小福」(1988)の名シーンなのだ。機会があればぜひ見てほしいお勧めの映画だ。1960年代の北京戯劇学院、大衆芸能の主流が演劇から映画、テレビに移行していく時代、幼い頃のジャッキーチェンやユンピョウ、サモハンキンポーら7人の子供たちを導く校長とその弟弟子を描いた映画で、この兄弟子と弟弟子の京劇のかけあいは二人の心情にシンクロする。帰宅後このシーンだけの切り抜き動画を見つけて、また泣いた。
そして二つ目はさらに遡ること10年以上前の高校の教室。漢文の先生が一度だけ、漢文を読み下しではなく、元の中国語の発音で読んでくださったことがあった。漢文の先生というと初老のイメージだが、実はその先生は今の田先生ぐらいの年齢だったように思う。漢文というものを何とか生徒に届けたいと思ってくださったのだろう。節はついていないものの、音もリズムも聞いたことがない響きで、メロディアス、読み下しの漢文とは全然イメージが違って驚いた。同時に、その年齢なりの恥ずかしさで田舎の女子高の木造2階の教室に女の子たちのクスクスが響いていた。
その二つが偶然同じ、運命を悟った項羽が虞美人におくった「垓下の歌」だった。それで私は今でもこの部分を思い出すのかなと思う。
漢文の先生はお元気だろうか。もしお会いできたら、先生の好きな漢文は私のDNAに届きましたよと伝えたい。
願わくば、私たちもいつか誰かに届く演奏ができますように。
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